研究概要 |
ラットの摘出遊離肺標本で、片側肺を両側肺換気下に60分間環流遮断(虚血)後30分間再環流(両側肺環流)を行なった。環流液を再環流した場合(TACBI(-))と、single pathとして再環流させなかった場合(Non-R)、また、環流液にTumor necrosis factor-α converting enzyme inhibitor(TACEI, Y-41654,Mitsubishi Pharm Corp, Osaka,10μg/ml)を加えて虚血/再環流を行なった(TACEI+)場合の3群で比較した。肺組織よりmRNAを抽出しRT-PCRでサイトカインmRNA発現の半定量的評価、in situ hybridizationによるサイトカインmRNA発現の評価、肺組織の2重染色(CD34 antigen染色とサイトカイン蛋白の蛍光免疫染色)によるサイトカイン蛋白の血管内皮細胞での検出および半定量、環流液中のTNF-αの定量(ELISA)、肺胞洗浄液中の蛋白量、TNF-α濃度、肺組織の湿乾重量比を求めた。虚血/再環流肺でTNF-α mRNAが血管内皮細胞(CD34-positive cells)に発現し、TACEI群で最大であった。肺湿乾重量比とBAL液蛋白濃度は3群すべてで虚血肺が内部コントロール肺よりも有意に(p<0.005)増加した。さらに、コントロール肺のBAL液中の蛋白濃度が群間で差があり、Non-R<TACEI<TACEI(-)であった。環流液中およびBAL液中のTNF-αは、TACEI(-)群で有意に高値を示した。片側肺の虚血/再環流モデルで、虚血肺はコントロール肺の血管内皮/肺胞上皮の透過性を環流液を介して亢進させTACEIはこれを殆ど抑制したが完全ではなく、TNF-α以外の液性因子の関与も示唆された。
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