研究概要 |
1.マウスの熱傷負荷後敗血症モデルを用いた、一次侵襲、二次侵襲に伴う免疫、代謝変動の検討と、解明した変動因子の能動的補正による治療効果の検討:Balb/cマウスの背部に30%のIII度熱傷を負荷し、7〜11日後に微量の細菌内毒素Lipopolysaccharide(LPS)を腹腔内投与するモデルにおいて、熱傷負荷後に肺のTh2ケモカインMDC含量が著増し、肝臓のMDC,TARC含量が低下することを明らかにした。さらにReal Time RT-PCR法を用いて、MDC,TARCの遺伝子動態もほぼ同様であることを確認した。熱傷負荷後の微量細菌内毒素投与により、著明な肺傷害が惹起されることから、現在抗ケモカイン療法の効果を確認中である。 2.各種細胞を用いた、侵襲に伴う免疫、代謝変動の検討:本年度はインキュベータ内に設置した改良型CCDカメラを用いて臍帯静脈血管内皮細胞を連続的に観察した。同細胞は正常環境下では活発に分裂・移動・増殖し、LPS刺激では、形態的に明らかな変化を認めなかったが、TNFα100U/ml刺激により、apoptosisと思われる細胞死を来す細胞が有意に増加した。さらにTNF〓と高濃度酸素の共存刺激かでは、さらにapoptosisを起こす細胞数が増加した。現在、好中球による内皮細胞傷害メカニズムを解析中である。 3.高度侵襲患者における検証:SIRSを呈した救急患者、ICU入室患者138人を対象に、各種凝固マーカー、好中球エラスターゼ(NE)NE/〓1-アンチトリプシン複合体(NE-AT)、NE分解フィブリン産物(e-XDP)を検討した。各種因子の中で、NE-AT,e-XDP,D-dimerがARDS患者で有意に高値を示し、さらに同患者のうち予後不良群ではNE-AT,e-XDPが有意に高値であった。今後、これら患者における代謝変動も観察予定である。
|