研究概要 |
アメロブラスチンという新しいシーズを新規骨治癒促進薬として用いることができるかどうかを検討するため,申請書にある計画にそって研究を遂行した結果,以下の成果を得た。 1.骨芽細胞に対して最大の生物活性を示すアメロブラスチンフラグメントを決定するため,N端のペプチド部分にアミノ酸を付加し長くしたり,アミノ酸を削って短くしたりして,その生物活性の消長をMC3T3-E1細胞のアルカリホスファターゼ活性能に対する影響を指標に検討した結果,N端部の16アミノ酸部分(16N)に最大の活性があることが示された。 2.骨芽細胞に対する16Nの影響が,どのような伝達系を介して作用するかを明らかにするため,ST-2ならびにMC3T3-E1細胞に対する代表的MAPKの動態を解析したところ,16Nの投与により著明な変化はみられなかったものの,p38のリン酸化を示す結果が得られた。 3.16Nの受容体を解析するためのアプローチとして,MC3T3-E1細胞に16NをコードするDNAを導入した。その結果,細胞外分泌が可能なベクターを導入したもののみに高いアルカリホスファターゼ活性がみられ,受容体が膜に存在することが示された。そこで,この細胞を用いて膜の受容体を解析すべく検討を試みたが,タンパク収量が少なく,十分な検討をするに至らなかった。 4. 16Nをラットの実験的骨折モデルに投与した際の治癒過程を予備的に観察した結果,対照群に比較して治癒促進傾向が示された。 本年度の検討により,16Nに骨芽細胞の分化促進に対する活性中心があり,細胞レベルでの作用機序の一端と,16Nを用いた骨再生療法の可能性が示された。
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