研究概要 |
平成17年度はRunx2/Cbfa1について、isoformの違いによる歯胚の発生・分化との関連を、器官培養法とアンチセンス法(S-ODN法)を組み合わせて検索を行い、タイプII/III Runx2/Cbfa1が歯胚の発生・発育を抑制し、またてタイプII/III Runx2/Cbfa1がamelogeninn、ameloblastin、dentin matrix protein-1、dentin sialophosphoproteinの発現を抑制することによりエナメル芽細胞と象牙芽細胞の分化を抑制し、硬組織の形成障害を起こす事を明らかにし、Boneに投稿した(in press,2006)。 又、我々がcDNAサブトラクション法により検出した歯胚形成に関連した遺伝子のうち、thymosin beta 4(Tb4)、についてin situ hybridization法による歯胚における発現状況を検索し、Tb4が歯胚の発生と分化に関連している事を明らかにした。特にTb4が、matrix metaloproteinase-2,-9の発現に関与している事を明らかにし、Histchemistry and Cell Biologyに投稿した(124:207-213,2005)。 cDNAサブトラクション法により検出した歯胚形成に関連した遺伝子のうち、PGK-1は、解糖系酵素であるにもかかわらず、歯胚を始め、胎生期の肝臓や肺に限局して発現が認められ、しかもWestern blot法によりGAPDHと複合体を形成し、発生・発育に伴う多量の細胞エネルギーの効率的な産生に関与している可能性を明らかにし、現在論文投稿準備中である。 Nucleolinについては、歯胚の発生・発育の抑制に関与しているが、エナメル芽細胞や象牙芽差異簿の分化には関与していないことを器官培養法とアンチセンス法により明らかにし、歯胚の発生・発育の抑制の原因がmidkineの発現抑制による可能性を見出した。この結果についても現在論文投稿準備中である。 また、cDNAサブトラクション法により検出した歯胚の発生初期に発現する遺伝子のうち、その遺伝子の塩基配列から予想される蛋白のモチーフからある種の受容体と予想される因子についてマウス胎児の発生過程における発現パターンをin situ hybridization法により検索し、この因子がマウスの諸臓器の発生に深く関与していることが示唆された。現在この因子を構成する蛋白の精製を行い、この蛋白を用いて抗体の作成に取りかかっている。抗体が作成されれば、フローサイトメトリーやHoechist33342蛍光色素を用いた細胞分離法にて回収した細胞から、さらにこの因子を発現している細胞を抽出する事ができ、歯胚の基となる細胞(歯原性幹細胞)の単離・同定が可能となり、歯胚再生への新たな段階へ研究をすすめる事ができる。
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