研究課題
ヒトの健康維持には、豊富な骨量を保ち、妥当な強度を示す健康な骨格を維持することが必要である。しかし、加齢、あるいは生理的状態からの逸脱に伴って骨量は減少して、骨は脆弱になる。従って、骨量の減少を予防して、減少した骨量を回復させる為に、骨代謝を担当する細胞群の機能制御メカニズムの解明が必要不可欠である。骨形成を担当する骨芽細胞が特異的な表現型を獲得するには、転写因子Runx2に加えて、いくつかの異なる転写因子が必要である。研究代表者は新規遺伝子Osterix(Osx)を単離、同定した。遺伝子改変マウスの解析から、Osxは遺伝学的にRunx2の下流で作用する、骨芽細胞分化と骨形成に必須な転写因子であることが判明した。Osx機能欠損マウスでは、Runx2を発現する細胞が骨形成予定域に存在するが、この細胞は骨芽細胞に分化せず、軟骨細胞の形質を発現した。従って、Runx2発現細胞は軟骨細胞にも分化しうる能力を持ち、骨芽細胞と軟骨細胞は共通の前駆細胞から分化すると考えられる。この仮説を検証する為に、Osx遺伝子の両端にloxPを導入した遺伝子改変マウスを作成した。このfloxed遺伝子改変マウスと軟骨細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するSox9-Creマウスを交配すると、その胎仔マウスは骨形成を示さないことから、骨芽細胞と軟骨細胞はSox9を発現する細胞集団の中から分化することが判明した。Osxが生後に進行する骨代謝を制御するか、否かを問うために、FK506投与マウスの表現型を解析した。FK506投与マウスでは、破骨細胞の活性が低下しているにもかかわらず骨量が減少した。このマウスの解析から、Osxは転写因子NFATc1との結合を介して生後のマウスの骨形成を制御すること、並びにFK506はこの結合を阻害することによって骨形成を制御することが判明した。
すべて 2005
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