ヒトの健康維持には、豊富な骨量を保ち、妥当な強度を示す健康な骨格を維持することが必要である。しかし、加齢、あるいは生理的状態からの逸脱に伴って骨量は減少して、骨は脆弱になる。従って、骨量の減少を予防して、減少した骨量を回復させる為に、骨代謝を担当する細胞群の機能制御メカニズムの解明が必要不可欠である。 骨形成を担当する骨芽細胞が特異的な表現型を獲得するには、転写因子Runx2に加えて、いくつかの異なる転写因子が必要である。研究代表者は新規遺伝子Osterix(Osx)を単離、同定した。遺伝子改変マウスの解析から、Osxは遺伝学的にRunx2の下流で作用する、骨芽細胞分化と骨形成に必須な転写因子であることが判明した。 Osxが生後に進行する骨代謝を制御するか、否かを問うために、FK506投与マウスの表現型を解析した。FK506投与マウスでは、破骨細胞の活性が低下しているにもかかわらず骨量が減少した。このマウスの解析から、Osxは転写因子NFATc1との結合を介して生後のマウスの骨形成を制御すること、並びにFK506はこの結合を阻害することによって骨形成を抑制することが判明した。 OsxとNFATc1の結合は、Osx中央領域を介してなされたが、この領域はNFATc1非存在下では転写活性を持たない。NFATc1に依存しないOsxの転写活性化領域はNFATc1結合領域よりもさらにN-末端にある。そこで、このOsxの転写活性化領域との結合を介してOsxの活性を調節する転写調節因子の有無を検討した。In vitroでのOsx活性測定系を用いたスクリーニングの結果、3つのコファクターを同定した。これらの因子は、NFATc1に依存しないOsxの転写活性化領域に結合して、Osxの転写活性を相乗的に促進した。
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