研究概要 |
骨組織に特異的に発現する転写因子として研究代表者が同定した「オステリクス(Osterix; Osx)」は、転写因子「ランクス2 (Runx2/Cbfa1)」と共に骨芽細胞の分化制御に最も重要とされる必須転写因子であることが明らかにされてきたが、オステリクスが如何なる分子機構によって骨芽細胞の分化を促すのか、また如何なる機構によって骨格形成の発生プログラムに寄与するのか、その本質については十分に理解されてはいない。本研究計画は、ランクス2からオステリクスを経て下流遺伝子に至る、骨芽細胞分化を制御する転写因子カスケードの総体についての解明を目標として、まずオステリクスが直接転写を制御する遺伝子についての解明を進め、同時にオステリクスの転写活性を調節する分子メカニズムについての解明を目指した。これらの解析から、推定することのできたオステリクス関連経路で役割を果たす幾つかの遺伝子群の中から、Runx2, Cnot7, Schunurri-2, Cizについて遺伝子欠損マウスの骨組織および骨由来細胞を用いた解析をおこない、これらの分子が骨芽細胞において伝える細胞シグナルと骨形成への影響について多方面から研究を発展させた。また骨芽細胞における液性因子による活性化径路として骨形成性蛋白と副甲状腺ホルモンを介した径路に注目してその関与の機構の一部を明らかにした。さらに新たな側面として、転写因子JunD、Nfat、形態パターニングのシグナル分子PlexinD1、イオンチャネル分子TRPV4に加えて、レニンーアンギオテンシン系の関与の可能性についても検討をおこなった。本研究の成果は骨生物学の発展という側面から、関連臨床医学への応用の可能性を広げるものであり、そのような形での社会への貢献を期待する。
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