「リソソーム蓄積に伴うストレスが単核貪食細胞を活性化させ、老化に伴う臓器の機能低下ならびに障害を引き起こす」という仮説の検討を行った。本年度はまず脳内の単核貪食細胞であるミクログリアのカテプシンD欠損に伴う変化ついて解析した。その結果、カテプシンD欠損マウスにおいてミトコンドリアATP合成酵素サブニットCは脳内では特にミクログリアに集積することが明らかとなった。さらに、ミクログリアにおけるサブニットCの蓄積増加と、誘導型NO合成酵素の発現、ニトロチロシンならびにリポフスチンの蓄積増加は非常に良く一致していた。これらの結果より、カテプシンDの欠損によるサブニットCのリソソーム蓄積が発端となってリポフスチン形成やミクログリアの活性化が引き起こされることが強く示唆された。そこで次に初代培養ミクログリアに対するカテプシンD阻害剤であるペプスタチンの作用を検討した。ペプスタチン30μM以上の濃度を適応するとミクログリアのサブニットCのリソソーム蓄積が認められた。またこの条件下においてp38 MAPキナーゼの活性化ならびに誘導型NO合成酵素の発現も観察された。さらに、CM-H_2CDFDAならびにDAF-FMDAを用いてペプスタチン適応に伴う細胞内活性酸素種の発生を検討した結果、ペプスタチン適応に伴い細胞内で過酸化水素ならびにNOが産生されていることが明らかとなった。p38 MAPキナーゼの活性化はNADPHオキシダーゼ阻害剤により抑制された。以上の結果より、カテプシンD欠損に伴うリソソーム蓄積により、活性酸素種の産生、p38 MAPキナーゼの活性化、誘導型NO合成酵素の発現という一連の現象が生じている可能性が強く示唆された。
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