リソソーム性アスバラギン酸プロテアーゼであるカテプシンD欠損(CD-/-)により全身性にセロイド/リポフスチンの蓄積が認められ、腸管壊死に伴う体重減少、網膜頚粒細胞壊死に伴う失明、神経細胞死ならびに障害に件う痙撃、運動障害などが生じる。さらに、ミクロダリアにおいて産生の増大した活性酸素種がこれらの組織傷害に関与することを示唆してきた。そこでCD-/-マウスのミクロダリアにおいてセロイド/リポフスチンの蓄積によって活性酸素種産生が増大する可能性について検討を加えると件に、ミクロダリアの未梢血管内注入による影響を検討した。 CD-/-マウスの脳組織においてセロイド/リポフスチンならびにミトコンドリアATP合成酵素サブュニットcのリソソーム内蓄積は生後16日目より観察された。初代培養ミクロダリアにペプスタチンAを適用すると3日以降にサブュニットCの蓄積が認められた。さらに、ペプスタチンA処理したミクロダリアでは活性酸素種の産生が有意に増加した。次に、酵素補充を目的に20日齢の野生型ならにCD-/-マウスの総頚動脈よりGFPトランスジェニックマウスより調整したミクロダリアの注入を行った。その結果、野生型マウスでは肺臓や肝臓などの末梢臓器へのGFP陽性ミクログリア浸潤は観察されたが、脳実質内への浸潤は認められなかった。ところが、CD-/-マウスでは血液脳関門の破綻は認められないのもかかわらず末梢臓器に加えて脳実質内にもGFP陽性ミクロダリアの浸潤が認められた。脳実質内に浸潤したGFP陽性ミクロダリアは抗CD抗体により強染色された。さらに、浸潤したミクロダリアの周囲の一部のニューロンにもCDに対する免疫反応が認められた。以上の結果より、CD欠損によるサブュニットCの蓄積によりミクロダリアにおける活性酸素種の産生増大が生じることが示唆された。また、末梢血管内に注入したミクロダリアはCD-/-マウスの脳内に浸潤し一部のニューロンにCDを補充している可能性が明らかとなった。
|