研究概要 |
Toll-like receptor(TLR)は貧食細胞等に発現し、微生物の侵入を感知するセンサーとして注目されているが、微生物の貧食における役割については不明な点が多く残されている。本研究の目的は微生物の排除におけるTLRの役割を明らかにする事である。 ヒト単球系細胞株であるTRP-1細胞をジアシルリポペプチドFSL-1で処理した後、FITC標識E.coli(Ec)とS.aureus(Sa)を貧食させた。FSL-1刺激により、グラム陰性菌であるEcよりもグラム陽性菌であるSaの貧食が強く増強されたが、ラテックスビーズの貧食は増強されなかった。このFSL-1の貧食促進活性はp38、PI3-キナーゼ及びアクチン重合のインヒビターであるSB203580、wortmannin及びcytochalasin-D処理で減弱した。また、FSL-1刺激によりTHP-1細胞ではp38とPI3-キナーゼが活性化し、さらに細胞表面におけるTLR2の発現が増加した。TLR2^<+/+>とTLR2^<-/->マウスの腹腔浸出細胞による細菌貧食を調べたところ、FSL-1刺激により細胞内に取込まれている細菌の数が、TLR2^<+/+>では顕著に増加したが、TLR2^<-/-では増強しなかった。以上の結果から、まず、TLR2そのものが貧食受容体として機能している可能性を考えた。そこで、TLR2を安定して発現しているchinese hamster ovary(CHO)細胞を樹立し、細菌貧食を調べたが、この細胞はこれらの細菌を貧食しなかった。一方、貧食受容体として知られているCD14を発現しているCHO細胞では明らかな細菌貧食の亢進がみられた。FSL-1刺激により、TRP-1細胞ではCD36,MSR1,Dectin-1,DC-SIGN等の貧食受容体のmRNAの発現が増強された。さらに、MSR1ならびにDC-SIGNを遺伝子導入したHEK293細胞は貧食能を示した。 さらに、TLR2を発現したHEK293細胞にDC-SIGNを導入するとTLR2によるリガンド認識が増強されること、TLR2によるリガンド認識がCD14により増強されること、TLR2リガンドであるFSL-1がin vivoにおいてTh2応答を増強すること等を明らかにした。
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