研究課題
本研究では、口腔バイオフィルム細菌叢において培養が困難なあるいは未知の細菌群集の生態について分子遺伝学的手法を駆使して解析することを目的とした。今年度は新しい分子遺伝学的技術を適用して口腔バイオフィルムメタゲノム解析実験を行ない、以下のような研究成果を得た。1)これまで口腔バイオフィルム細菌叢の分析を行なってきた細菌16SリボソームRNA遺伝子(16SrDNA)を指標としたPCR-変性剤濃度勾配電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis : DGGE)法に加えて、今年度は試料中の細菌DNAを抽出し、蛍光ラベル付き増幅プライマーを用いて、全細菌16SrDNA遺伝子断片約1,500bpを増幅した増幅産物を制限酵素で消化した後、遺伝子解析装置でフラグメントパターンを解析するというTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism (T-RFLP)法を確立し、口腔内細菌叢のプロファイル化を試みた。多くの未知の難培養細菌群集と思われるフラグメントピークを得た。2)昨年に引き続き、口臭を主訴とする患者から得られた膿栓試料の細菌叢について細菌16SrDNAクローンライブラリー法で分析した。その結果、口臭原因物質である含硫黄化合物を産生する嫌気性細菌や未知の細菌群を同定した。また古細菌焼物Methanobrevibacter oralisのファージクローンライブラリーを作成し、歯周病患者血清と反応する菌体蛋白の同定を進めている。3)健常人歯垢のDNAサンプルからβラクタマーゼ遺伝子(cfxA/cfxA2)を網羅的に解析し、新規cfxA/cfxA2を見出した。4)研究究協力者であるモンタナ州立大学Philip S.Stewart教授のもとに狩山玲子が出向き、バイオフィルム研究最新技術を修得した。その結果、共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いてバイオフィルム形成過程や阻害過程を三次元的にリアルタイムに解析できる実験系を確立できた。
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Bacterial Adherence & Biofilm 20巻(印刷中)
日本歯科衛生学会雑誌 1巻・2号
ページ: 25-33
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