研究概要 |
ヒト新鮮単離象牙芽細胞にdual cell patch clamp法を用いて,象牙芽細胞層には電気的ネットワークが広く存在していることを示した.以下に結果を列挙する. 1.カップリング率・係数 (1)カップリング率は隣在する2細胞間のカップリングは33/43ペア(76.7%)で見られた. (2)カップリング率は細胞間距離50-125μmでは10/21ペア(47.6%)でみられた. (3)カップリング率は細胞間距離150μmを超えると5/67ペア(7.5%)でみられた. (4)カップリング係数(電流注入した細胞での電位変化を1とし,離れた細胞の電位変化の比:細胞間距離50μm以下ではほとんど1に近いが,次第に低下する. これらのことから象牙芽細胞間をほとんど減衰なく素早く伝播することは,象牙質/歯髄複合体に及んだ外来刺激情報の信号化と生体防禦機能に貢献していることが推測される. 2.Agingのカップリングへの影響 1)13,16才の象牙芽細胞間カップリングのconductanceは,21才より有意に大きかった. 2)細胞に注入した電流の減衰時定数は,13,16才では21才に比べて有意に大きく,電気容量も大きかった. これらのことから,若い(歯根完成前の)象牙芽細胞間における細胞間ネットワークは,萌出と,それに伴う2次象牙質形成を前により大きな電気的集合体として機能していることがわかった. 3.細胞外pHのカップリングへの影響 (1)pHが微増するを細胞間コンダクタンスは増加した. (2)pHがさらにアルカリに傾くと電流は逆に流れにくくなった. これらのことから,細胞外pHの変化が細胞間結合の電気的強弱をコントロールしている可能性があることがわかった.
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