研究概要 |
本研究において、象牙芽細胞の機能を電気生理学的に解析するとともに、象牙芽細胞間および象牙芽細胞と下層細胞間の神経系を介さない直接的細胞間情報伝達機能に関する新しい所見を得た。さらに、象牙芽細胞と密接な関係にある象牙細管を刺激進入経路としてとらえ、象牙細管内容液の外来刺激進入防御能に関する知見を加えた。 すなわち、1.ヒト象牙芽細胞がギャップ結合を介して電気信号、低分子を容易に相互交通できる機能複合体であること、2.ネコ象牙芽細胞膜に歪み検知性のイオンチャンネルが存在すること、3.ナイスタチンを作用させて象牙芽細胞全体の膜電位をみると、通常の受容器細胞と同じ電位変化を示さないこと、4.象牙芽細胞は電気的に結合することにより、大きな電気容量を持つ巨大細胞と同じであること、5.象牙芽細胞間には方向特異性の電気通過性はないが、象牙芽細胞とその下層細胞間には方向特異的なasymmetricな整流機構があること、6.象牙芽細胞外pHの変化に伴い象牙芽細胞間electrical conductanceが影響を受けること、7.血管平滑筋と内皮細胞間に存するelectrical-あるいは、dye-couplingが存在すること,8.低分子量のlucifer yellowを象牙芽細胞にイオン導入すると、同種細胞および下層の異種細胞に速やかに、gap-junctionを介して広がること、9.象牙芽細胞の外環境としての象牙細管の外向き流で、細菌性LPSの拡散が抑制されること、10.象牙細管内容液の外向き流を、電荷、氏分子化、高濃度化、内向きの静水圧で抑制し、物質の歯髄内進入を促進できること、11.象牙芽細胞とその周囲の細胞集団は外界からの浸透性を減少させうること、12.う蝕下層の象牙質では、細菌性毒素の侵入と象牙細管の狭小化が動的に生じることについて明らかにした。本研究は、外来刺激に対して象牙芽細胞と象牙細管内容液は有機的に共同して防御機能を果たすことを電気生理学的に明らかにした。 今後はこの研究成果を礎石にして象牙芽細胞で検知・伝達された情報処理法の詳細を明らかにしていきたい。
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