研究課題
本研究は歯科用有機材料硬化体を唾液に浸潰し、それら硬化体由来の化学物質を同定・定量する簡便な分析法の開発、模擬唾液浸漬溶媒系の開発、マウス胚性幹(ES)細胞から培養系で気管上皮性の繊毛細胞の分化誘導系の確立及び生体材料の繊毛上皮に対する細胞毒性・発生毒性の評価系の開発並びに歯科用充填材レジンモノマーで処理された培養ヒト細胞におけるストレスタンパク質の発現変動について検討した。平成17年度に確立したHPLCを用いた簡便な分析法を用いて、難溶性溶解補助剤であるポリソルベート80(TW80)を唾液に添加し、有機材料硬化体からの溶出量に及ぼす影響を検討したところ、低濃度のTW80では唾液中の加水分解酵素の失活程度は小さく、硬化体からの溶出物の量を顕著に増加させた。このことから、TW80を用いて模擬唾液浸漬溶媒系の開発を試みたところ、唾液による溶出とTW80による溶出とを比較検討し、唾液に相当する溶出量が低濃度のTW80で得られた。マウスES細胞から、培養系で気管上皮性の繊毛細胞の分化誘導系では繊毛細胞は、生体の気管上皮に認められるものと同じく繊毛特異的なマーカータンパク質であるHFH-4(Foxj-1)の発現や気管特異的タンパク質であるTTF-1やSPCなども発現していることが分かった。誘導系に微量なレチノイン酸を添加することにより、クララ細胞や粘液細胞の分化頻度が上昇することが分かり、気管上皮組織に非常に近い組織の誘導が、マウスES細胞を用いて無血清培養系で可能となった。培養ヒト細胞におけるストレスタンパク質の発現変動ではビスフェノールA(BPA)は、estrogen receptor(ER)高発現細胞では、受容体を介しストレスタンパク質量を増加させるestrogen様作用を示す一方、ERαを発現していない細胞では、ストレスタンパク質発現量減少作用を示した。重合調節剤や重合禁止剤として使用されている化学物質のなかで4-methoxyphenolは、ERα高発現細胞において5種類全てのストレスタンパク質量を増加させたが、対照細胞においてストレスタンパク質量の減少作用を示すことが認められた。この細胞系におけるストレスタンパク質量変動を指標とした細胞毒性試験法が有効であることが明らかとなった。
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