研究課題
生体親和性に優れたチタンは現在歯科インプラントや人工関節などに用いられているが、チタンは高温で活性であり、鋳造などの工程が非常に難しく成形性に問題があり、個々の症例に応じた形状の付与が難しいことや、弾性率が実際の骨に比較して大きすぎることが問題視されている。本研究ではチタン内部に多くの気孔を持たせることで、低弾性率・高強度のポーラス(多孔質)チタンとし、その材料学的特徴を最大限に活用するための任意形状付与と機能性付与に焦点を絞り、1)任意の形状付与法、とくにラピッドプロタイピング法による造形法の開発、2)薬物除放性(ドラッグデリバリーシステム、DDS)、光触媒能(自己滅菌機能)などの機能性の付与の開発とその有効性を検討することを目的とした。まず、成形性と混練性を両立しうるチタンとワックスの配合比率、バインダーの脱脂時間、そしてヒト皮質骨に近似した強度を持たせる焼成条件について調べ、独自のポーラスチタン作製プロセスを確立した。また、このプロセスを用いて作製したポーラスチタンを、擬似体液中でのアパタイト析出能、細胞増殖試験、ラット大腿骨埋入試験などから生物学的に検討した。特に埋入試験では、ポータスチタンの気孔内部に骨形成能を有するシンバスタチンを含浸させ、同時に埋入し、薬物除放性の効果についても検討した。これらの実験から、バルクのチタン板に比べ、ポーラスチタンは大きな比表面積を有するため、より早期に多量のアパタイト析出が認められ、骨芽細胞等との細胞親和性も優れていた。また、埋入試験においても、良好な骨親和性を示し、シンバスタチンを含浸させたものではより多くの新生骨の形成が認められ、薬物除放の効果が確認された。以上より、本法によるポーラスチタンでは個々の症例に応じた任意形状の付与が可能であり、内部の気孔を利用した薬物除放担体としての応用も可能な医用材料として有用と考えられる。