研究概要 |
根管処置歯における支台築造の一術式であるファイバーポスト併用レジン支台築造は,根管処置歯の残存歯質と歯科接着により一体化を図れる可能性がある.一体化の結果,脱落,歯根破折などの支台築造の臨床的トラブルへの有効な対策となりうる.本研究は保持力と破折強度に関して検討し,ファイバーポスト併用レジン支台築造の臨床ガイドラインの確立を目的とする. 平成17年度は保持力の検討を中心に行った.その結果,接着システムの違いによる接着材とファイバーポストおよび象牙質との接着性の違いが影響を及ぼしていることが分かった. 平成18年度は,臨床的にシミュレートした試料に対し,ファイバーポスト併用レジン支台築造がポスト長の短縮を可能とするか否かについて検討した. 試料は,ウシ歯をヒト上顎中切歯の歯根形態に倣い加工し,支台歯とした.実験条件としてポスト長3条件(2,5,8mm),歯冠部歯質量3条件(0,0.5,1mm)について,ファイバーポスト併用レジン支台築造と鋳造支台築造で修復した失活歯の破折強度と破折様相で比較検討した. その結果,両支台築造とも,歯冠部歯質1mmではいずれのポスト長でも破折強度に有意差が認められなかった.鋳造支台築造」の歯冠部歯質0mmでは,ポスト長5mm,8mmの場合,高い破折強度が得られた.ファイバーポスト併用レジン支台築造の歯冠部歯質0mmでは,いずれのポスト長でも破折強度に有意差が認められなかった.一方,破折様相では,歯冠部歯質0mmではファイバーポストを使用することで再修復可能な様相を示したが,歯冠部歯質0.5mm,1mmでは再修復困難な破折様相を示した. したがって,ファイバーポスト併用レジン支台築造において,ポスト長を短縮できる可能性が示唆された.また,ファイバーポストを使用しても再修復困難な破折様相を示す可能性が示唆された.
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