研究概要 |
二年目となる本課題の目的は,抜去され捨てられてしまう歯を粉砕して再び抜歯窩に注入することが,歯槽骨の治癒と骨吸収抑制に効果があるかどうか明らかにするために動物実験を行った.まずラットの下顎切歯を抜歯して,その抜歯窩に粉砕した同一個体の切歯を担体と共に埋入した.切歯は凍結粉砕器を用いて粉砕し,その粉砕片の担体としては,ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用し,抜歯直後の抜歯窩に填塞した.施術後2週と4週に下顎骨を摘出し,マイクロCTによる3次元骨形態計測および病理学的観察を行った.HPCのみを注入した群を対照群と設定し,実験群と比較した結果,実験群では抜歯窩辺縁から梁状に新生骨が生成されており,経時的に梁状部分の太さが増加し板状,塊状を呈していることが認められた.また,Bone Volume Fraction(BV/TV)を用いて新生骨量の計測を行った結果,コントロール群2W:18.6%,4W:45.7%,実験群2W:30.1%,4W:43.9%となった.この結果より実験群とコントロール群を比較して実験群の方が初期の新生骨量が増加していることが認められ,抜歯窩に粉砕抜去歯牙を注入したことにより治癒の促進と骨量の増加が示唆された.担体として用いたHPCは食品添加物としても利用されている材料だが,担体のみ埋入による抜歯窩治癒に対する効果についても,抜歯後に何も入れずに治癒を待った群との比較検討中である.また,抜歯窩の出血により薬剤が流れ出る可能性もあり,注入薬剤の物性の向上も今後の検討課題となった.
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