研究概要 |
現在、インプラントの成功率は、概ね95%前後とされている.失敗の原因は埋入後に骨結合が得られない初期脱落と、一度獲得された骨結合が徐々に失われるインプラント周囲炎である.初期脱落に関してはインプラントの表面構造の改良、すなわち機械研磨面から粗面への移行することで解決されつつある.しかし、経年的にインプラント周囲の骨レベルが下がると、粗面の一部が口腔内に露出して表面が汚染されやすいため、インプラント周囲炎の原因となる.一旦、感染を起した粗面は、感染からの脱却が非常に困難で、多くは撤去されているのが現状である.今後,粗面インプラントの長期経過症例が増加することが予測されるので、この問題の解決は急務と考えられる 本研究では感染したインプラント表面から汚染を除去し、感染により失った周囲の骨を回復する方法について検討した.また、インプラント周囲の骨吸収を再生療法によって骨造成を行った場合に再骨結合が達成されているかどうか確認する方法について検討した.骨結合の評価はインプラント体が金属であるため顕微鏡やX線による評価が難しい.そこで,プラスチックインプラントにチタン箔をコーティングし観察を容易にする方法について検討した.その結果β-TCP粉末の噴射によるインプラント表面の汚染の除去は表面性状の変化が少ないことがわかった.また,粉末自体が生体材料であるため新たな汚染となる懸念がないので臨床的に有用な方法であると考えられる.また,チタンコーティングインプラントは透過型電子顕微鏡やマイクロCTによる骨結合の評価において有用性が高くインプラント-骨界面の詳細な検討が可能であること考えられ,汚染されたインプラントのリカバリー後の骨結合の評価に有効な方法である.
|