研究概要 |
唾液腺腫瘍組織と細胞株,正常唾液腺組織について,マイクロアレイ解析による遺伝子発現,さらに2次元電気泳動-質量分析法によるタンパク発現のプロファイリングを行い,唾液腺腫瘍における特異的発現遺伝子,ならびに疾患関連遺伝子を検索し,腫瘍の臨床諸指標と関連する分子腫瘍マーカーを検索することを目的とした。唾液腺腫瘍のtotal proteinを抽出し2 dimensional difference in-gel electrophoresis(2D-DIGE),質量分析装置(MALDI-TOF/MS),peptide mass fingerprinting(PMF)法を用いてタンパクを同定した。また,Affymetrix社製GeneChipで遺伝子発現パターンを調べ,さらに,real time PCRで発現量を解析して,RNAレベルとタンパクレベルの発現状態の比較を行った。さらに,抗体のあるタンパクはWesternBlottingと免疫組織染色により発現状態を確認した。その結果,Stathmin,Maspin,SIGLEC8,SERPINB2,BOK,LGALS7,ANXA8,FAT3,CDKNlA,FBN2,IGFBP2などの因子が有意に腫瘍において発現増強しており,ECHS1,SOD2,ALAD,Proapolipoprotein,SERPINB1,NALP1,CASP8,CD28,ATP2B2などが発現減弱していた。これらの内,特に発現が腺系腫瘍で著しく亢進していたStathminとMaspinについて多くの腺癌組織で発現状態をmRNAレベルとタンパクレベルで検索した。その結果,Stathminは癌化との関連が強く示唆され,Maspin は腺癌の分化度,組織型との関連を強く示唆され,唾液腺腫瘍の組織、分化度分子マーカーとして有用であることが示唆された。
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