研究分担者 |
永田 昌毅 新潟大学, 医歯学系, 助手 (10242439)
藤田 一 新潟大学, 医歯学系, 助手 (60271805)
新垣 晋 新潟大学, 医歯学系, 助教授 (30134943)
朔 敬 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40145264)
星名 秀行 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30173587)
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研究概要 |
【目的】 インテグリンは細胞の接着、運動、増殖、分化、生存に関与するといわれており、その性格から悪性腫瘍の予後判定因子(バイオマーカー)としての可能性が示唆されている。今回、舌癌悪性度のバイオマーカーとして癌組織中のインテグリンファミリー遺伝子(ITG)群の遺伝子発現量を比較検討した。 【対象と方法】 方法は腫瘍組織のtotalRNAからcDNAを合成し、TaqManプローブを用いた定量的リアルタイムPCR発現解析を行った。 (1)舌癌69症例を対象としたITG遺伝子ファミリーに属するITGA-1、2、3、5、6、v、ITGB-1、3、4、5、6の発現を定量した。得られたITG遺伝子発現データの標準化を目的にハウスキーピング遺伝子(GAPD、ACTB、18sRNA)、上皮細胞骨格構成分子である、KRT5、細胞質内アンカータンパクのEVPN、JUP、PLEC1、PXNについても発現を定量した。 (2)歯肉癌55例を対象としたMMP遺伝子ファミリに属するMMP-1,-2,-3,-4,-7,-8,-9,-10,-11,-12,-13,-14の発現を定量した。遺伝子発現データの標準化を目的にTIMP-1,-2,-3,RECKについても発現を定量した。 それらに対するITGの発現量の比をとり、リンパ節転移や転帰など、臨床経過との関連性について多変量的な統計学的手法を用いて解析した。 【結果】 (1)ITGA3、ITGB4及びITGB5の3遺伝子発現レベルと頚部リンパ節転移の成立に関与が認められた。特にITGB4/JUP、ITGB5/ACTBは遠隔転移や死の転帰をたどる頚部リンパ節転移に相関が認められる一方、ITGA3/KRT5、ITGA3/JUPには死の転帰をとらない頚部リンパ節転移に関連が認められた。死の転帰にかかわる要因について統計学的に検出されたのはITGB4/JUPのみであった。 (2)歯肉癌の転移とMMP-1などのコラゲナーゼの間に軽度の相関が観察された。しかしその傾向は強いものではなかった。 【考察】 舌癌の経過に伴い見出されるリンパ節転移には臨床的に頚部リンパ節転移のレベルで制御可能なものと遠隔転移から死の転帰に結びつくものが存在し、前者はITGA3、後者はITGB4、ITGB5の遺伝子発現レベルで定義される可能性が示唆された。その原因として、ITGB4の上昇とITGB5の低下は癌細胞の間質接着依存性の細胞死阻止の機能に関連していることが示唆された。歯肉癌においてMMP遺伝子群の発現レベルは舌癌において見られたものに比べて、臨床予後に対するその影響は少ないことが示唆された。舌癌と異なり可動性の少ない歯肉癌においては転移巣成立においては、細胞の遊走や細胞死阻止における多様な機能の関与が必要であることが推察され、今後の研究課題として提示された。
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