研究課題
基盤研究(B)
頭頸部癌に対する温熱療法は、頸部リンパ節移動に対してのRF加温が施行されることが多いが、生体深部や口腔内の加温は現状では困難である。さらに、免疫学的には扁平上皮癌細胞は免疫原性が特に低いために、従来の細胞免疫治療では十分な治療効果は得られていない。我々は磁性体微粒子を用いた温熱療法により、加温によって壊死した癌細胞が、ワクチンとして全身性に抗腫瘍免疫を活性化させ得ることを示してきた。今回、温熱療法と抗原提示細胞である樹状細胞を用いて温熱免疫細胞療法の基礎的研究を行なった。MCLの核となる磁性微粒子には酸化鉄微粒子であるマグネタイト(Fe304)を用いた。我々の開発したマグネタイトによる温熱療法は、マグネタイトだけが発熱する周波数を交番磁場は発生装置によって照射することで癌を特異的に加温することが可能である。マグネタイトをカチオニックリポソームで包埋したMagnetite cationic liposome(MCL)は、病変部に局所投与することにより注入部位に蓄積し、病変部のみを特異的に加温することが可能であった。in vitroにおいて加温したSCCVII細胞と未熟樹状細胞を48時間共培養した後では、MHC class I、II、共刺激分子CD80、86の発現が増強していた。In vivoにおいて扁平上皮癌に対してMCLを用いた温熱療法に樹状細胞を併用することにより、樹状細胞が成熟し、CTL活性、NK活性が上がり腫瘍特異的な免疫能が賦活され得る可能性が示唆された。この治療法の確立は頭頸部癌、特に口腔癌治療において、原発巣のみならず、頭部リンパ節転移や遠隔転移に対しても効果のある可能性が示唆された。
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