本年度も引き続き咀嚼・嚥下運動の研究を行った。実験は咀嚼系、嚥下系、咀嚼嚥下運動連携の3部構成で行っている。特に本年度得られた成果について述べると咀嚼系の研究において成果が得られた。本実験にて"顎運動における機能的順応"について三叉神経系の神経生理学的な視点から検討を行った。前年度に引き続く方法で生後2-4日目のSD系ラットから脳幹スライスを作製し、人工脳脊髄液のもとで実験用チャンバーに固定して実験を行った。三叉神経運動ニューロン群について神経根からの細胞外記録法及び神経細胞体からのパッチクランプ法を用いて神経活動を解析した。 実験は、不要な活動を停止させるため、薬理学的に神経間の伝達を遮断した状態のもとで行った。三叉神経運動ニューロン群にInductionとなる刺激を加え、その結果生じる神経活動の変化を三叉神経運動根から細胞外神経記録にて検討した。三叉神経運動核に電気的あるいは化学的刺激を与えることで、三叉神経運動ニューロン群の神経活動の増強を認めた。さらに、パッチクランプ法を用いて単一の三叉神経運動ニューロンに同様にInductionを加え、単一ニューロンの神経活動の変化を検討した。単一の三叉神経運動ニューロンにおいても同様に、Induction刺激にて、興奮性が増強し、これが長期に継続した。以上より、三叉神経運動ニューロンが内因性の神経可塑性(長期増強:LTP)をもつということが確認された。本結果は来年度も確認と追加実験を行う予定である。
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