研究概要 |
口腔癌の骨浸潤能は,浸潤先端部における骨微小環境の影響を大きくうけていると考えられる。そこで臨床応用が可能な骨微小環境を再現した癌の骨浸潤能評価モデルの開発を目的に研究を行った。 今年度は,(1)生検での臨床病理学的悪性度や浸潤能と骨浸潤の予測性,X線学的評価との関連について,(2)各種骨基質蛋白を添加し,骨微小環境を再現した骨基質培養シャーレに,各種口腔癌細胞を播種し,骨吸収活性化因子や血管新生因子(CTGF, VEGF)のmRNAレベルでの発現を,定量的PCRを用いて測定し,骨微小環境により変化する破骨細胞活性化因子の検討を行った。 (1)臨床的病理的検討 当科で加療を行った歯肉癌患者の手術標本のうち,資料の整った症例について検討した。 1)生検の組織学的浸潤能の病理学評価(山本,小浜の分類)とX線学的骨吸収との間に相関は認めなかった。 2)歯肉癌における組織学的骨浸潤像とX線学的骨破壊像との関連でも,また,破骨細胞数の増減と組織学的骨浸潤の関連でも有意な相関は認められなかった。 以上の結果は,通常の生検組織から骨破壊能を予知することの困難性を示すものであり,骨浸潤能評価モデルの必要性を示す結果であった。 (2)in vitroの骨微小環境再現モデルにおける癌細胞の破骨細胞性骨吸収活性化因子の発現の検討 骨微小環境下に遊離する非コラーゲン性骨基質蛋白(IGF II, TGF-β,IGF I, PDGF, bFGF)を添加した骨基質培養シャーレに,各種癌細胞を培養し,骨吸収因子,血管新生因子など癌の骨浸潤に関わる因子をmRNAレベルで網羅的に検討した。現在,全ての成長因子の個別の影響に関する結果による集計はとれていないが,TGF-β,IGF-IIが骨吸収に関連する遺伝子群の調節に与える影響が強いこと,癌細胞間でかなりバラツキがあるが,骨吸収促進因子の発現(特にPTHrP)ならびに血管新生因子の変化の多くが促進性に働いており,骨微小環境により,癌細胞は調節をうけていることが示唆された。
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