研究概要 |
本年度は誤嚥性肺炎の予防法を確立するため、代償的方法である姿勢調節法の効果を検証した。 対象は舌癌術後の嚥下障害患者15例で、健側傾斜姿勢の奏効例と非奏効例について、健側傾斜量,喉頭蓋の形態(喉頭蓋谷角,喉頭蓋角)ならびに嚥下動態(喉頭挙上開始時間,食道入口部到達時間、食道入口部開大時間)の相違点を明らかにするため,VF画像所見を比較検討し,以下の結果を得た。 1)喉頭蓋谷角は健側傾斜姿勢により奏効例では直立姿勢時と比較し、増加傾向を示したのに対し,非奏効例では減少傾向を示した。 2)喉頭挙上開始時間,食道入口部到達時間は奏効例,非奏効例とも直立姿勢時と比較し、姿勢調節時には短縮した.また喉頭挙上開始時間と食道入口部到達時間の時間差は姿勢調節により延長傾向を示し,とくに奏効例では全例正の値で,その平均値は健常人における平均値より長かった。 3)食道入口部開大時間は奏効例では健側傾斜時に延長する傾向を示したが,非奏効例では短縮する傾向を示した。 4)嚥下後の貯留量について口腔内は奏効例,非奏効例とも姿勢調節後には1例を除いて軽度であった.喉頭蓋谷部,梨状陥凹部については奏効例と比べ非奏効例では姿勢調節後に中等度以上のものが多かった。 以上の結果から1.喉頭蓋谷の増加,2.喉頭挙上開始時間と食道入口部到達時間の時間差が正の値,3.食道入口部開大時間の増加が健側傾斜姿勢の奏効に関連していたと推察された。
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