研究概要 |
当該研究期間に以下の研究を展開した。 I.嚥下音・呼吸音解析システムの検出精度の向上を図り,外部雑音検出用マイク・嚥下音/呼吸音検出用マイク・適応信号処理システムを利用して,周囲騒音を抑制し,かつ音質の優れた検出音を獲得しうるシステムを構築した。 II.音響特性による嚥下障害診断の重要な手掛かりとなる嚥下音の産生部位と対応した音響特性を明らかにするため,健常成入12名の96嚥下について検討し,舌根部通過音,喉頭蓋通過音,食道入口部通過開始音,食道入口部通過途中音および食道入口部通過終了音を識別し,それぞれの音響特性を明らかとした。 III.嚥下障害を有する頭頸部腫瘍患者から嚥下音46音,呼気音46音を検出し,嚥下障害判別のための音響特性の臨界値を設定した。嚥下音の持続時間0.88秒,呼気音の補正音圧17.2dBを臨界値として設定し,臨界値を超えた場合,そのときの嚥下は障害があると評価した。この評価とVF所見との判定一致率は感度82.6%,特異度93.5%であった。 IV.頭頸部癌術後嚥下障害患者を対象とし,健側傾斜姿勢の奏効例と非奏効例のVF画像を比較検討した。姿勢の奏効に関連する所見は1.喉頭蓋谷角の増加,2.喉頭挙上開始時間と食道入口部到達時間の時間差が正の値,3.食道入口部開大時間の増加であった。 V.摂食・嚥下障害を有する精神疾患患者への対応の効果を検討した。対応の結果,窒息事故は半減し,呼吸訓練により呼吸機能,口腔機能,QOLの向上が得られることを明らかとした。 VI.口腔リハビリテーション科に通院する摂食・嚥下障害患者の臨床統計を行った。 VII.頭頸部癌術後嚥下障害に対する昭大式嚥下法の効果を検討し,本嚥下法施行時には気道は閉鎖し,喉頭挙上と食塊の移送が早まることを明らかとした。 VII.頭頸部癌患者の術後機能に関する主観評価を検討した。
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