研究概要 |
本プロジェクトでは口腔扁平上皮癌(QSCC)原発巣及び転移巣から悪性腫瘍組織を分離し、マイクロアレイ法を用いた網羅的な遺伝子発現解析を通して、OSCCの発症・進展・転移に関わっている遺伝子(群)を明らかにすることを目指している。悪性腫瘍の転移に関わっている遺伝子群を明らかにするために、原発と転移巣由来悪性腫瘍における遺伝子パターンを検討したところ、それぞれのグループに特有のパターンが観察された。クラスター解析を行うと、転移巣由来サンプルではシグナル伝達、受容体活性、転写因子活性、及びアポトーシス関連遺伝子群の発現増強が観察された。例えば、原発巣由来に比べて転移巣由来腫瘍組織における発現が4倍以上増弾したものには、USP2,TLR4,LPL,LAIR1,GD36,BCL2A1,AK5などが存在してした。一方、発現が低下したものには、DST,C19orf33,WNT10Aなどが観察された。さらに、転移性原癸腫瘍と限局性の悪性腫瘍の商には明らかな遣伝子発現パターンの違いが認められた。すなわち、これらの遺伝子発現パターンは腫瘍の予後を推測する有用なマーカーとなると期待できる。転移性口腔扁平上皮癌細胞にはBCL2A1遺伝子の発現が充進しているが、これらのファミリー分子の発現を制御する分子としてNF-κBが知られている。NF-κBはインターフェロンαによる細胞死誘導系ではアポトーシス抑制的に作用していた。一方、JNK活性化はTRAIL発現上昇を介してアポトーシス促進的に作用していることが我々を含む複数のグループによって明らかにされてきた。つまり、細胞死抑制的に作用することが知られているPKC-αに対するインヒビターあるいは細胞死促進的に作用するJNK活性化薬剤をインターフェロンαと併用すると効率的に細胞死が誘導できるが明らかとなった。これらの併用療法は副作用の少ない治療法として期待できるであろう. 以上より、OSCCの遺伝子発現プロファイルが腫瘍患者の予後の判定に役立つことが示された。
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