口唇・口蓋裂の発症のメカニズムは未だ不明な点が多い。特に症候群を伴わない、口唇・口蓋裂の原因は単独の遺伝的因子等に起因するのではなく、遺伝的要因、染色体異常、環境的要因などの複数の因子が複雑にからみあって生じると考えられており、その分子メカニズムは不明である。われわれは従来から、転写因子であるRunx1が顎顔面組織の発生に関わる役割を検討してきた。Runx1は骨形成のマスター遺伝子であるCbfa1/Runx2と同じRunxファミリーに属し、急性白血病の原因遺伝子として知られている。興味深いことに、このRunx1 mRNAは二次口蓋が形成される過程において、癒合直前の口蓋突起の癒合予定部位の上皮に、特異的にその発現が増大し、癒合後、この上皮の消失とともに、その発現が上皮から間葉に移動することを我々は過去に見出した。そこで、本研究では、Runx1が口蓋裂の形成に関わる可能性について、Runx1のノックアウトマウスを用いて検討した。Runx1ノックアウトマウスは口蓋の形成前に胎生致死である。そこで、血液特異的にRunx1をレスキューした。Runx1-/-/Gata1-Runx1マウスを作成した。その結果、このマウスでは一次口蓋と二次口蓋の間で口蓋裂を生じることをわれわれは見出した。平成18年度では、この一次口蓋と二次口蓋の癒合不全がどのような分子メカニズムで生じるかについて明らかにする予定である。
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