研究課題/領域番号 |
17390553
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野中 和明 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (90128067)
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研究分担者 |
福本 敏 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教授 (30264253)
山田 亜矢 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助手 (40295085)
湯浅 健司 九州大学, 大学病院, 助手 (20398142)
田口 智章 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (20197247)
増本 幸二 九州大学, 大学病院, 講師 (20343329)
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キーワード | 糖鎖シグナル / 口唇裂口蓋裂 / ポストゲノム研究 / ヒアルロン酸 / 母体子宮内羊水 |
研究概要 |
様々な器官発生過程での関与が示唆されているTransforming Growth Factor super familyの中で、TGF-β3が口唇癒合とその発育にどのような役割を演じているのかについて、口唇裂自然発症CL/Frマウスを用いた検索を行った。 『方法』 1:口唇裂自然発症CL/Frマウス胎生10.5,11.5,12.5日齢の上顎突起と鼻突起を取り出し、免疫染色法とRT-PCR法を用いてTGF-β3の発現を検索した。 2:TGF-β3の強い発現が認められた11.5日齢マウスの上顎突起、鼻突起を取り出し、TGF-β3添加群およびTGF-β3非添力群を2日間無血清培養し、TGF-β3と口唇癒合の関連性について検索した。 3:TGF-β3による口唇癒合のメカニズムに関して、血管新生と間葉組織の増殖について着目し検索を行った。具体的には口唇の無血清器官培養を行い血管新生についてFlk-1(血管芽細胞マーカー)とCD31(血管内皮細胞マーカー)、細胞増殖についてはCyclinD1(細胞増殖マーカー)を分子マーカーとして用い、RT-PCR法、免疫染色法、およびウエスタンブロット法を用いてそれぞれの分子マーカーの発現レベルの検索を行った。 『結果』 1:TGF-β3が口唇癒合時期にあたる胎生11.5日齢のマウス口唇の上皮組織に強い発現が認められた。 2:TGF-β3の外来性の添加によりその濃度依存的に口唇癒合率が上昇した。 3:分子マーカーFlk-1,CD31の発現レベルが外因性TGF-β3の濃度依存的に促進していた。つまりTGF-β3により、マウス上口唇組織内に血管新生が誘導され、口唇の癒合に貢献していると考えられた。 4:増殖分子マーカーCyclinD1の発現レベルが、外因性TGF-β3の濃度依存的に促進していた。つまり外因性TGF-β3により、マウス上口唇の間葉組織において細胞増殖が亢進し、口唇の癒合に貢献していると考えられた。以上の結果から、口唇の癒合過程における分子機序として、TGF-β3は血管新生と細胞増殖の促進を通して口唇癒合に関与していることを示唆できた。また本研究は、口唇裂患児の分子治療法の開発に有用な知見と考えられる。
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