研究概要 |
本研究はDNAによる個人識別において,歯牙を中心とした高度変性資料からの検査精度を上げるため,検査法の転換を計りさらに検査対象の拡大し、個人識別のみでなく性別判定,人種推定、人獣鑑別等にも役立つ研究を目的としたものである。具体的成果としては、1.ミトコンドリアDNA多型については、100例の新たな日本人試料から13の新しい系統を全ゲノム配列決定により確立した。マレー人については、117例の試料のcontrol領域の多型および系統検査から、東アジアと南アジアの系統から構成されることを示し、現状でマレー特有ないくつかの系統を確立した。これらのデータは,東アジアにおける対象者の出身地の由来の識別に重要な情報となる.2.日本人のY染色体多型については,近年市販された16座位のY-STR kitデータからbinary haplogroupを推測するためのデータベースを提示した。これはアジアを対象とした日本人の識別に応用できる。マレー人のYの系統については東アジアに広がるO系統の新しい分岐の存在を明らかにし、これはアジア内の識別に役立つ、3.X染色体多型については16種類のSTR多型のmultiplex PCRによる同時検出を可能にし、日本人の多型を調査した。4.常染色体多型は,マレー人の15座位のSTR多型を検査し、マレー人集団の特徴の一部を示した。5.変性DNAからの多型検査については、2種のSTRの比較から、PCR効率が増幅サイズに影響されることを示し、SNP検査が変性DNAの検査に適していることを事例で示した。6.唾液タンパク多型の歯科臨床と関連しうる基礎研究を行った。 近年の研究は進展が早く,計画当初のものが研究過程で他の研究に先を越され、方針を変えざるを得ない点もあったが、研究成果としては実用上有益な結果が得られたものと確信している.
|