研究概要 |
ヒト歯肉癌由来上皮細胞株Ca9-22に対する硫化水素(100ng/ml)の毒性をtrypan blue染色で調べたところ,24,48,72時間インキュベーションではコントロールと差は無く,90%以上の生存率であった.細胞壊死の程度を乳酸脱水素酵素(LDH)の逸脱により調べたが,これも差は無く細胞壊死は10%未満であった.次にアポトージスの特徴である細胞質中でのDNAのfragmentationをCell Death Elisaにて検討したところ,暴露48時間でenrichment factorが1.084,72時間で1.089とapoptosisの発生を認めた.その一方,細胞外ではDNAのfragmentationの増加は認めなかった.さらに,NexinにてGuavaフローサイトメーターにてアポトージスの検討を行った.その結果,48時間72時間暴露でアポトージス細胞がそれぞれ9%であった.一方,埋伏智歯手術時に採取した歯肉片より培養したヒト歯肉上皮細胞では,Guavaフローサイトメーターにて24時間暴露で7%,48時間暴露で16%,72時間暴露で13%のApoptosisを認めた.また硫化水素濃度を50ng/mlとすると,24時間暴露で6%,48時間暴露で11%,72時間暴露で17%のApoptosisを認めた.以上より,癌細胞ではApoptosisは発生し難いことがわかった.さらに正常細胞では,より低濃度で,Apoptosisを発生することがわかった.これらのApoptosisの発生は,コメット分析にてもTail length,%DNA in tailそしてtail momentのいずれからもDNA損傷が発生することを確認している.
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