研究概要 |
この研究ではヒト歯肉由来線維芽細胞,ヒト歯肉由来上皮細胞様細胞Ca9-22細胞を使用し,硫化水素がアポトーシスを誘導するか検討した.方法は,細胞を硫化水素100ng/ml Air-5%CO_2に24時間,48時間,72時間と持続的な暴露を行い,フローサイトメトリーによるアネキシン-Vの染色性によりアポトーシス細胞の検出をおこなった. 結果,Ca9-22細胞ではコントロールと比して,アポトーシス細胞発現の有意な上昇が認められた(the Kruska-Wallis test,p<0.05).歯肉線維芽細胞でも同様の上昇を認めた.さらに両者で,酸化ストレスの増加を認め,ミトコンドリア電子伝達系の脱分極が観察された.さらに,カスペース3,カスペース9の活性増加が認められ,反対にカスペース8には変化は認められなかった.以上より,ミトコンドリア電子伝達系の障害に由来するアポトージスが,硫化水素に惹起されると推論された.以上より,口臭物質・硫化水素は,歯肉炎発生過程,特に初期において歯肉上皮にapoptosisを発生させることで,歯周炎発生の原因になると考えられた.さらに,DNA損傷を惹起することを発見し,従来のアポトージス研究で言われているように,アポトージス細胞死とDNA損傷による悪性化の2面性があることが示唆された. そこで,今後は硫化水素の細胞悪性化機序の解明を研究していきたい.さらにアポトージスの歯周病発生機序についても上皮幹細胞に及ぼす影響を検討したい.
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