研究課題
本年度は、集団遺伝学や遺伝的な代謝疾患のマス・スクリーニングに内在する諸問題につき以下の問題提起をした。1.テクノロジーアセスメントや費用・便益分析をするにあたり、優生学的な意味合いを持つ可能性がある。2.スクリーニングのターゲット(人種・民族など)を限定することは、差別と考えられる可能性がある。3.スクリーニングの目的あるいは利益主体をいかに考えるのかによって、次子のリスクを告知するか否かが変わり得る。4.保因者が検出された場合、その後の家族計画に関わるリスクについて、誰がどう伝えるのか(そもそも伝えるべきなのか)という問題が生じる。5.新生児スクリーニングのインフォームド・コンセントにつき、日本においては関連9学会による「遺伝学的検査に関するガイドライン2003年」にて、説明者を担当医師としているが、行政的(あるいは国家的)事業の場合には、実施主体が説明責任を負うと考えた方が望ましいのではないか。6.米国において、新生児スクリーニングを拒否する機会が法的に保証されているのは、2州のみである。ほとんどの州は、父母にその検査を実施することを告げられることなく新生児スクリーニングを実施しているが、遺伝疾患のスクリーニングであることを含めて、検査に先立つ父母の同意(あるいは拒否権の行使)が必要と考える。7.日本も米国も、スクリーニングの結果の通知は、父母ではなく担当医に送られる。その理由はあるものの、パターナリズムの許される形態と考えるのか、親の自律性を損じるものと考えるのか、その点を明確にする必要がある。8.タンデムマス・スクリーニングの導入に伴って、以上の問題は早急に解決する必要がある。以上については、平成18年1月14日〜15日に開催した科研の共同開催研究会「先端医学と市民・社会一遺伝情報・ゲノムリテラシーを素材として」(於:札幌市)にて報告した。
すべて 2006
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看護学雑誌 70・2
ページ: 112-118