研究概要 |
【目的】先行研究の結果,信頼性と妥当性が確認できたBladder Scan^<TM>刑BVI3000(以下,膀胱スキャナ)を用いて,本年度は,施設入所中の尿失禁のある認知症高齢者を対象に,尿失禁と残尿量の実情を把握し,排尿パターンやADL,認知機能,QOL,睡眠との関連を分析する. 【方法】(1)認知症疾患治療病棟およびグループホームに入院・入所中の高齢者女性54名を対象に,排尿ごとに尿失禁の有無の把握を行い,さらに,膀胱スキャナを用いて,平日の5日間,排尿直後に残尿量測定を行った.また,尺度により,ADL,認知機能(MMSE),QOL評価を行った.(2)老人保健施設の認知症高齢者14名を対象に同様の調査を行い,オムツ使用者には排尿センサー装置で,約3日間の尿失禁モニタリングとアクチウォッチによる睡眠モニタリングを行い,睡眠への影響 【結果】(1)分析対象者46名のうち58.7%に尿失禁があり、頻度は様々であった。残尿量測定では,失禁あり群の方が有意に残尿量が多いことが示された.また,尿失禁・残尿量に対し,ADL,認知機能,QOLを独立変数として回帰分析を行った結果,尿失禁の有無にはADLが,残尿量にはQOLが影響していることが明らかとなった.(2)については、現在分析中である. 【考察】詳細な失禁の有無と残尿量の把握により,各個人の排尿における残尿量と尿失禁の関連を検討することができた.尿失禁あり群ではADL得点は低いことが示され,尿失禁の評価とともに身体機能の評価が重要であることが明らかとなった.また,残尿量とQOLとの関連では,残尿量が多いほどQOL得点は低く,残尿による不快感が影響を与えているものと思われる. 【結論】認知症高齢者においても,尿失禁あり群で有意に残尿量が多いことが明らかになり,ADL,QOLとの関連も明らかになった.今後は尿失禁および睡眠モニタリングによる解析結果と参加観察による排尿動作に関する身体機能を追加測定し,個々の対象者に応じた排尿援助法を検討する予定である.
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