2005年に内戦が終結したスーダンに関して以下の2点を柱とする調査研究を継続した。(1)戦争から平和へという歴史的転換が、スーダンの国家と社会に現在進行形で与えるインパクト。(2)持続的平和を実現するため実行・計画されている平和構築プログラムの実態と評価。研究代表者の栗本英世は、研究全体の統括とともに、南部スーダンの首都ジュバと東エクアトリア州において約3週間の現地調査と研究連絡を実施し、研究協力者の岡崎彰は、首都ハルツームと青ナイル州、および南部スーダンの首都ジュバにおいて約2週間の現地調査、文献資料収集と研究連絡を行った。研究協力者の栗田禎子は、北部スーダンの政治的動態に関する資料収集と文献研究に従事した。研究協力者の太田至は、ケニア北西部の難民キャンプを対象に、南部スーダン難民帰還とそれが地元民に与えるインパクトについて調査研究を行った。各自は、包括的平和協定(CPA)の実施と国連.国際社会の関与・介入がローカルからナショナルに至る各レベルに与えているインパクトを見極めつつ、以下の五つの調査課題について総合的な分析と考察を行った。(1)ローカルなレベルで存在する民族集団間の敵対・緊張関係と、和解と平和構築の試み、(2)帰還民・元兵士の再統合、(3)地方政府のガバナンスと新旧エリート層の動態、(4)ナショナルなレベルでの権力分有、権力闘争の動態、(5)復興・人道援助の経済学と政治学。本研究によって、スーダンにおける復興と平和構築はいかに進められるべきか、それを担う主体はだれか/なにかという、スーダン人自身にとって、また社会科学的にもきわめて重要な問題に関する実証的データの蓄積が達成されたとともに、理論的考察を深めることができた。
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