昨年度に引き続き、追儺儀礼に用いられる台詞について、文字起こしをしながら細部の検討を行った。2004年貴州省道真県河口郷で調査した映像をデジタル化して整理し、即座に画像を呼び出せる状態にして、法師たちにその場で映像を見せながら進めている。本年度は、森・陳班、稲葉・再班の2班に分かれ、聞き取りと入力のチームワークを整えてとりくんだところ、思いのほか早く全ての台詞を文字にすることができた。そこで日程の後半は、1つの会議室に全員で集まり、文字原稿を前にして法師たちに内容の朗読を依頼し、その模様を複数のデジタルデバイスで記録する作業を始めた。 法師のもつ膨大な世界認識をいかに引き出すか、これまで試行錯誤を繰り返してきた。全ての台詞を拾うという発想は、一昼夜以上の儀礼の物理的長さから一見無謀にも思えたが、具体的に作業を積み重ねたことで文字化が実現したのみならず、文字によって「提個頭(頭だしをする)」することによって、呪文などの立ち上がる具体的瞬間を記録者とインフォーマントが共有することが可能になった。正に成果が動き始めた感がある。 今後はこれを継続、発展させつつ、研究のまとめに入りたい。 [研究協力者]稲畑耕一郎:早稲田大学文学学術院教授/稲葉明子:早稲田大学社会科学総合学術院非常勤講師:タク修明:貴州民族学院民族研究所教授/陳玉平:貴州民族学院中文系助教授/再文玉:貴州省道真県宗教民族研究所研究員
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