本研究は、清華大学(台湾)など台湾の大学の協力を得てフィールド調査を実施し、音声データを収集・分析の上、台湾の標準中国語声調の音韻・音響学的メカニズムを実証的・定量的に追求する国際的プロジェクトである。具体的には、台湾の標準中国語の声調発音において、(1)第三声に見られる台湾独特の声調上の「ゆらぎ」(他声調への変化)に関する通時的規則性・普遍性を探り、さらに(2)特に第三声と第四声に現れる台湾独特の音響学的・音韻学的特質を解明し、四声の相対的体系化を図る、という2点を目的とするが、究極的には、標準中国語には地域的差異がないとする論理的前提に一石を投じ、その内に実存する多様性に光を当てることを目標としている。 研究計画の初年度に当たる平成17年度には、これまで収集したデータの整理を行い、必要に応じて追加のデータ収集を計画した。具体的には、これまで収録した各音節について各被験者につき約1時間分の音波ファイルを作成し、さらに各ファイルの一連の音波を個々の音節に分割する作業を数名の東北大学大学院生を研究補助者として雇用して行った。さらに海外共同研究者Sanders博士のもとに赴き、現在の分析内容の検討、分析結果の共同発表の打ち合わせを行った。また台湾へ向かい、これも共同研究者である連博士と詳細なフィールド調査の打ち合わせを行った。この打ち合わせでは、さらなる被験者集団の確保の方法について決定し、実際の音声データ収録を行う人員の選定も計画した。これまでラベリングを行い作成した音声データファイルは徐々にデータCD化し、研究代表者、共同研究者の間で共有できるようにし、検証可能な形にする予定である。
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