研究概要 |
1)トゥルファン文書については,「五胡」時代官文書について,ロンドン所蔵のスタイン将来アスターナ出土文書と,近年トゥルファン各地から出土した文書とを合わせた総合的な研究が可能になった.本プロジェクトではいち早くその可能性を具体的な研究成果として示すことができた.官文書をその書式によって,分類する方法も提起した. 2)敦煌文書・世俗文献については,パリ所蔵のペリオ将来文書を題材として,表現・記載方法などから,作成年代を推定する新たな方法を提起することができた. 3)仏典に代表される敦煌文献については,典籍としてのその形状に注目し,巻子本や冊子本などの相互関係を解明した.また形状の変遷過程を,仏教の流布という社会現象と関連させて説明することを提起した. 4)ロンドンとパリを合わせ,敦煌文献中の王義之の臨本など法帖として用いられたものを整理し,敦煌という西北地域における文字文化と教養のあり方について指摘した. 5)敦煌とトゥルファンを合わせ,同じ戸籍という文書(「五胡」時代に限る)の両地方における共通点と相違点を指摘し,合わせて従来注目されてきた敦煌戸籍の内容解釈を周辺出土資料とくに図像や画像磚などを用いながら試みた.
|