研究概要 |
本年度は、1852年の英緬戦争によって南部ミャンマーを失ったマンダレー王朝によって導入・施行されたタッタメーダ新税の法制史的検討とその村落行政機構への影響について,主としてその史料に関する調査・研究を行った。 まずタッタメーダ税について,地方の町村での徴収実態を明らかにするため,ミャンマー国ヤンゴン市にある仏教振興局研究図書館に保存されているザガイン地方におけるタッタメーダ税関係文書の調査を,平成18年7月および平成19年3月と二回にわけて行った。その結果,村ごと,個人ごとの徴収リストの一部を収集することができ,実際の徴収様式を解明することが可能となった。またこれと同時期に,ミャンマー各地の僧院を訪れ,所蔵されているパラバイ文書にある本件関係史料の収集も行った。 またこの新税制に関するイギリス植民地政府による記録を,ロンドンにある大英図書館が所蔵するIndia Office Recordsの中から検索する試みを,平成18年9月に行った。マンダレー政権の動向がうかがい知れる,イギリス駐在官の残したマンダレー日記や,1875-1899年のビルマ政庁内務省報告書(Home Proceedings)をマイクロフイルムの形で入手した。 さらに本件の最終目的である,地方社会の支配構造変化を地方首長権の変容を中心に考察するため,平成18年11月18日に,メンバー以外のミャンマー研究者を招聘して,エーヤーワディー流域地方の支配体制の変容に関する研究会を開催した。 以上の結果,タッタメーダ税制はかなり形骸化したものであったこと,そしてイギリス植民地政府は王朝時代における村落支配者を急激に改廃するのではなく,できるだけ穏便に改変していったことがわかった。
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