研究概要 |
現地における調査・研究 2005年8月19日から,9月19日にかけて,中国陝西省考古学研究所の協力を得て中国西安における現地調査を実施した。精密GPS測量を実施した地点は,陝西省考古研究所が発掘津調査を実施している地点,地上に墳丘や城壁が良好な状態で残っている地点,ボーリング調査によって地下遺構を確認された地点の3種である。 これによる調査の内容は,以下のとおりである。 前漢皇帝陵:初代皇帝劉邦の長陵,二代皇帝恵帝の安陵,四代皇帝景帝の陽陵について,皇帝陵・皇后陵・陵園城壁・墓道・陪葬墓群・陵邑城壁について,高精度GPS測量を実施した。 その結果,基本的に一つの皇帝陵は,固有の統一的な方位に基づいて,設計施工していることが明らかになった。長陵・安陵については,これを築いた咸陽原の地形にあわせて,15度強西に振るが,咸陽原の東端に位置する陽陵では,皇帝陵・皇后陵・陵園城壁・墓道(司馬道),陪葬墓群のすべてが西偏0度20分強西偏と,ほぼ真北の方位であり,かつ墳丘や陵園城壁の各辺,墓道の幅,陪葬墓の配置にいたるまで漢尺(1尺約23cm)を用いて定めた距離で施工していることが明らかになった。 長安城:前漢王朝の首都長安城については,城壁・門と城壁内の大型建物・道路を中心として測量調査を実施し,地区によって数度,方位が異なる場合のあることが判明した。ただし長安城は広大であり,道路については途中で屈曲している可能性があるため,来年度以後,さらに多くの地点において精密測量を実施する予定である。 関連遺跡の調査:山西省陶寺遺跡(天文観測遺跡),内蒙古城市遺跡について,実地見学・調査を実施して,中国の首都における技術の淵源や影響について考察する資料を収集した。 日本における調査・研究 中国陝西省長陵・陽陵・長安城の衛星画像(解像度0.6m)解析を実施すると同時に,当該地域のDEM(Digital Elevation Map)を作成して地形を復元した。これらを基にして,GIS空間解析を実施した結果,皇帝陵が長安城周辺をよく見はらせる位置に建設し,かつ初代皇帝劉邦の長陵が,他の皇帝陵からも良く見える位置にあることが判明した。 以上の実績をさらに積み重ねたら,漢王朝の首都・皇帝陵の配置計画の全体像と意義がさらに鮮明になるであろう。
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