研究分担者 |
千田 稔 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20079403)
森 洋久 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 助教授 (10282625)
小方 登 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 助教授 (30160740)
新納 泉 岡山大学, 文学部, 教授 (20172611)
宮本 一夫 九州大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (60174207)
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研究概要 |
現地における調査研究 2006年8月21日から,9月11日にかけて,中国陝西省考古学研究所の協力を得て中国西安市・成陽市における現地調査を実施した。精密GPS測量を実施した地点は,陝西省西安市から成陽市にかけて所在する成陽原上に築いた前漢皇帝陵のうち,前年度に調査を実施しなかった皇帝陵・皇后陵合計12基についてである。 これによる調査成果の主な内容は,以下のとおりである。 前漢第5代皇帝武帝茂陵,第6代皇帝昭帝平陵,第8代皇帝元帝渭陵第9代皇帝成帝延陵,第10代皇帝哀帝義陵,第11代皇帝平帝康陵における皇帝陵・皇后陵についで高精度GPS測量を実施するとともに,モバイルGPSを用いて墳丘の3Dモデル作成データを取得した。 この結果,前年度の調査成果とあわせて,前漢時代の最大の陵墓地である成陽原に所在する18基の皇帝陵・皇后陵について,正確な位置と,形および規模を明らかにすることができた。その主要な成果は以下のとおりである。 陵墓の全体的配置 ほとんどの陵墓は初代皇帝高祖長陵と第5代皇帝武帝茂陵を結ぶ直線上に配置されていて,その誤差は200m以下と非常に小さい。成陽原は,首都長安城がある南の低地より一段高いが,造墓計画ラインは成陽原の南側崖にそっている。その背後(北)には山地があり,全面(南)には渭河が流れていることから,この全体配置は中国で最古の風水思想に基づいた大規模造営プランであると推定できた。なお第4代皇帝景帝陽陵と第11代皇帝平帝康陵のみは,この造墓ラインから外れる位置にあるが,景帝康陵については地形的制約,平帝康陵については最後の皇帝という政治的制約に基づくものと推定している。 個々の陵墓の方位・形・規模 陵墓の方位は,成陽原の造墓計画ラインに沿って西へ15度前後振るものと,真北方位のものとに大別できる。年代が新しいほど真北方位を指向するものが増加する。形はすべて方墳であるが,頂部平坦面が次第に広くなり,正方形で段築成をおこなうものが増加する傾向がある。規模については皇帝陵では,武帝茂陵が最大であり裾の1辺233m・高さ46m,初代皇帝高祖長陵が最小であり裾の辺が131m×161m・高さ21mである。武帝陵は別格の大きさであるが,これを除くと皇帝権力の強さと皇帝陵の規模とは必ずしも比例しない。 次年度に成陽原以外の陵墓を調査したら.漢代陵墓の全体像と意義が、さらに鮮明になるであろう。
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