当初の予定通り、7月19日から8月28日までペルーに滞在し、リマ市のポンティフィシア・カトリカ大学で軍事政権の資料を調査した。軍事政権の閣議録下書きは付属資料を後回しにして本体部分のみを閲覧したが、当初見込んでいたよりも早く進むことができた。これにより、来年度の在外研究では本体の調査を終えて、付属資料の調査に進むことができる見込みとなった。 ペルー滞在中に主要な書店を回り、ペルー軍政関係およびペルーの政治一般に関する文献を購入した。現地の研究者との交流と意見交換も行なった。 ペルーでの作業は予想以上に進行したが、日本における資料の整理と分析は当初の見込みほど進まなかった。来年度の課題となる。 上記のように資料の分析は充分に進んではいないが、資料から以下のことが浮かび上がってきたと考えている。 1.ベラスコ大統領が主宰する閣議は思いのほか「民主的」で、ベラスコが自由な討議を促し、それに呼応してかなり率直な意見交換が行なわれていること。 2.閣議録の議論からは、軍内の派閥対立が明確に浮かび上がってこないこと。意見の対立や応酬はかなりあるが、それらは部分集団間の体系的対立ではなかったこと。 3.閣議の多くの時間が経済状況の報告や国家が当事者である契約の詳しい説明に費やされていたこと。 4.閣僚は全員将官であったが、自分が担当するセクターについてよく情報を把握していたこと。 以上が、ベラスコ政権前半期の閣議録下書きから見えてくる印象である。
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