本研究は、インドネシア、マレーシア、ならびにフィリピンにおけるイスラム寄宿塾ならびにイスラム学校の実態調査を通じ、各3カ国におけるイスラム教育機関の社会的な役割について解明し、また、本研究が今後の東南アジアのイスラムの理解に資することを目的とした。中期的には、本研究を起点として日本に政治・経済的に近い東南アジアのイスラム社会の将来の発展について研究することを考えつつ、本研究を実施した。 具体的には、以下の現地調査の結果明らかになっている基礎資料は、以下の通りである: (a)インドネシア、マレーシア、フィリピンにおけるイスラム教育機関の全体数、地域ごとに分類した数(注:インドネシアとフィリピンにおいては政府発表データが各省間で大きく異なるため精査が必要) (b)イスラム教育機関に就学する生徒・学生数(注:学校数と同様、インドネシアとフィリピンにおいては各省間で生徒・学生数が大きく異なるため精査が必要) (c)イスラム教育機関の類型化(私立(「ワカッフ」とよばれるイスラム財団形式など)、公立等) (d)一部のイスラム教育機関についてはその財源 (e)一部の学校に対する外国からの支援の有無 (f)イスラム教育機関の一般的なカリキュラム (g)教授方法の類型化 なお、本研究で研究項目としてあった、卒業生の行方については、実際の調査後、情報収集がとても困難であるためこの部分を断念した。 今後の課題としては、今研究で説明しきれなかった部分を深化し、研究を継続することだ。そのため、代表研究者は、新規申請を行い(19年4月に採用決定)、そこではタイを追加し、また、海外調査においても、平成17〜18年の調査で得た基礎資料をもとにして、イスラム教育機関が現在おかれている状況について5名の研究者(日本2名、東南アジア3名)を中心に新しく軸に調査・研究することとした。
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