18年度は、「『辺境東アジア』住民のアイデンティティをめぐる国際比較調査研究」の2年目で、予定通り台湾政治大学と香港大学の協力を得て、11月に沖縄、台湾、香港、そしてマカオにおいて電話による同時アンケート調査を順調に実施した。 調査は初年度と同様、文化的・民族的帰属意識と政治的・国家的帰属意識と大きく二つのカテゴリーに分類して行った。調査結果は初年度のそれに比べ、全体的に大きな変化を見せず、四地域のアイデンティティ構造は比較的に安定していることが分かった。すなわち、エスニック・アイデンティティに関する質問の回答結果から、地元意識の強い順は、台湾・沖縄・香港・マカオとなり、またナショナル・アイデンティティについて、国・中央政府への求心力の強い順は、マカオ・沖縄・香港・台湾になっている。とりわけ、若者の政治的自立志向に関して、台湾は最も強く、最も弱いマカオや沖縄と対照的な結果になった。 2年目の調査結果の一部はすでに11月27日に沖縄県庁にある記者クラブで開かれた記者会見で公表し、台湾と香港の協力機関もそれぞれ現地のマスコミに報告した。沖縄では、時事通信、『沖縄タイムス』、琉球新報によって直ちに報道され、また結果公表後、毎日新聞、西日本新聞、OCNテレビなどの取材も受けた。台湾と香港側でも現地のマスコミに幅広く報道され、特に台湾では一時話題になり陳水扁総統の元旦メッセージまで触れられた。 19年度において、3回目の調査のほか、複数の学術雑誌への論文投稿を予定しており、さらに学会の分科会を申請し、学術の視点で「辺境東アジア」地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを探ってみることを検討している。
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