研究課題
本研究は、2004年に25カ国となった、拡大EUのその後の境界線をめぐる民族・地域格差の拡大と、それがヨーロッパの安全保障に具体的にどのような影響を与えているのかを、アメリカとの関連で検討するものである。平成17年度は、具体的には、東の境界線である、ロシア・カリーニングラード、西ウクライナ、南のトルコなどが今後どのような形でEUと関係を形作っていくか、について、検討した。このテーマに基づき、特に前期・春は、集中的に資料を集めて読んだ。6月には、比較政治学会で、「中・東欧の民主主義と経路依存性」について報告し、国際政治学者、比較政治学者からの多くのコメントを受けることができた。夏は、集中的に、各地の国際会議で境界線と地域協力の問題について報告した。7月初め、オーストラリア・シドニーでの国際歴史学会・国際関係史学会で拡大EUと新加盟国の民主化、および安全保障におけるアメリカの影響力の拡大について報告し、7月末には、ドイツ・ベルリンでの国際ICCEES(中欧、スラヴ学会)で、拡大EUの境界線と民族問題について報告した。さらに8月末には、トルコ・イスタンブールで、WISC(世界国際関係評議会)が開かれたが、そこでも拡大EUと移民問題について話をすることができた。実際にベルリンやイスタンブールで、拡大EUに直接携わった学者とコンタクトを持ちながら研究を進めることが出来たが、それは非常に貴重な情報収集の契機となり、また貴重なコメントを受けることができた。帰国後は、その成果をまとめて、一橋大学や京都大学での集中講義で研究調査を報告し、今回の科研テーマともつながる「ワイダー・ヨーロッパ」の国際会議(京都大学)でも報告させていただき討論することが出来た。昨年は、九州大学で科研を行なった(代表:菅英輝、九州大学教授)成果として、本論とも直接つながる、アメリカとヨーロッパの安全保障の問題を追求することが出来た。(「NATOの東方拡大と欧州の安全保障」)また、国際政治学会の雑誌国際政治で『新しいヨーロッパ 拡大EUの諸相』の特集を出し、それを編集担当委員としてまとめることが出来、欧州憲法条約、近隣諸国政策、トルコの加盟問題などについて、学会に問題提起を行なった。さらに現在進行中であるが、岩波書店から『ヨーロッパ東方拡大』として新加盟国の状況を中心とした拡大EUの加盟後の問題を6月に刊行予定、慶応大学出版会『EU統合の軌跡とベクトル』では、「拡大EUとナショナリズム」について、執筆する予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (4件) 図書 (3件)
Russia and NATO ; New Areas for Partnership(St.Petersburg University Press)
ページ: 44-52
21世紀の安全保障と日米安保体制(ミネルヴァ書房)
ページ: 150-175
『国際政治』特集『新しいヨーロッパ、拡大EUの諸相』 142号
ページ: 1-17
Globalization, Regionalization and the History of International Relations(Edizioni Unicopli, Deakin University)
ページ: 91-102