本研究はジェームズ・ステュアートの未発表草稿 1 Sir James Steuart Denham. Notes on money and credit. MS2291 No.4 2 Sir James Steuart Denham. Miscellaneous notes on coinage. MS2291 No.5 を解読するものであった。 これは『経済学原理』(1767)の手書き草稿の初めての解読となり、その貨幣・信用論部分の1764年に執筆された初稿であることが明らかとなった。これらはステユアート自身の手で記されたおびただしい加筆・修正と共に解読・再現された。 さらにこの草稿の検討を通して、 (1)『経済学原理』が全四編構成から全五編構成に組み替えられていたこと (2)『経済学原理』の信用論が全面的に組み替えられてその貨幣的理論が成立したこと というステュアートの経済理論を理解する上で極めて重要な発見があった。 これらの成果の主要なものは科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を受けて『ジェームズ・ステュアート』経済学原理』草稿』(奥山忠信・古谷豊編著、御茶の水書房、2006)として出版された。 近年ステュアート研究はめざましく進展しつつあり、主著『経済学原理』の研究からさらに草稿研究の段階へと至っている。本研究の成果は『経済学原理』の草稿資料を初めて解読・公開するものであり、そこから明らかとなった諸点と共に内外のステュアート研究に大きなインパクトを与えるものである。
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