金型は量産機械製品の生産に不可欠なマザーツールであり、(1)ユーザーの開発・設計との係わりが深い、(2)技能に依存する部分が残る、(3)単品生産にも係わらず相当の設備が必要になり1ヶ所生産・輸出対応が経済合理性にかなうなど、これまで国内生産に優位性があった。一方で(4)価格を重視したユーザーのグローバル調達、(5)CAD等のデジタル技術進歩、(6)インターネット等通信手段の向上など現地生産を促進する環境変化もみられる。本研究は量産機械製品の生産が加速する東アジアにおいて、上記(1)〜(6)といった両面があるなか、進出金型メーカーが国内生産と海外生産、また海外での多国間生産をどのようにバランスさせているのか、それを可能にする要因等を、東アジア金型産業の全体像、日系企業を中心とした東アジアへの進出経緯、国際分業の実態等を把握しながら明らかにしようとするものである。 17年度は中国・華東、そして華南と華北の一部、約60社の現地調査を実施した。それによると(1)についてはユーザーの開発・設計体制の変化が特に電気・電子分野でみられること、一方、自動車分野では国内での品質管理・認承が強く残り、これが国内外の生産地決定に影響を及ぼしていること、また(2)については金型分野によって(5)が代替・補完していること、(3)についてはこれまで外注に依存していた仕事を国内外の拠点が担うこと(国内産業内分業からアジアでの企業内分業へ)で設備稼働率を維持していること、(6)については設計工程では日本との国際分業が進展していることなどが明らかになった。18年度は中国に加えASEANでの現地調査を実施、上記の知見を東アジア全体のなかで捉えていくこととする。
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