研究概要 |
18年度は17年度に実施した約60社への調査に加え,中国・華北,華南地域及びシンガポール,マレーシアの日系金型企業約30社への現地調査を実施し,日系金型産業の国際分業とその決定要因について把握に努めた。その結果,金型は本来,市場地での製作が望ましいが,どの程度技能が必要になるか(技能度)に加え,ユーザーの製品開発・設計との擦り合わせが,どの程度必要になるか(擦り合わせ度)によってその製作地が決まることが明らかになった。金型を「A.技能度」「B.ユーザーの開発地」「C.擦り合わせ地」「D.製品設計の完成度」によって類型化すると,Aが低い金型(タイプ(6))は問題なく市場地での製作が可能となる。またAが中程度の金型においても,Bが現地化されていればCも現地で可能となり市場地で製作となる(タイプ(5))。仮にBが日本でも,ユーザーの設計者が現地に出向けばCが現地化され市場地で可能となる(タイプ(4))。一方,B, Cが日本の場合でも,Dが高く,擦り合わせ度が低く,その結果が伝達されれば市場地で製作可能となる(タイプ(3))。条件はタイプ(3)と同様であるが,Aがより高い「超」精密,「超」短納期など,いわゆる高付加価値の金型は市場が東アジアでも重量・大きさも小さいため空輸に向き日本製作となる(タイプ(2))。「超」短納期は金型企業の製作スピードというよりも東京の大田区や東大阪市に代表される中小企業の厚みのある集積によるところが大きい。そしてB, Cが日本,Dが低い金型についてはユーザーの製品設計と並行して製作される必要があり,同様に日本製作となる(タイプ(1))。これまで日系企業が東アジアで製作してきたのはタイプ(6)で,近年ではユーザー(特に電気・電子,OA産業)の開発現地化とともには(3)〜(5)の現地化が進んでいる。これらの金型の日本輸出については輸送費や納期との兼ね合いで決まる。
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