研究課題
基盤研究(B)
本研究は東アジアに進出する日系金型企業の日本親会社との国際分業の実態を踏まえ、国際分業を決定する要因は何か、また東アジアのなかで日本の金型産業に求められる役割を明らかにするものである。これまで技術移転しにくく輸出中心であった日本の金型産業だが、近年では東アジアでの製作・販売、また日本への輸入が進んでいる。これは金型における産業内国際分業の進展に他ならなく進出先と日本親会社とのあいだでは様々な工程間での分業、製品間での分業がみられる。まず金型の工程を三段階にわけ分業をみると、最初の「生産準備段階」では東アジアのコストを活かしCAD図面やNCデータの作成が行われ、それらが日本に送信されている。次の「加工段階」では日本と東アジアの拠点間の設備稼働状況に応じた仕事のやりとり、そして最も技能を要する最後の「仕上げ段階」ではこれまで日本中心であったのが、近年では日本人技術者等の指導のもと現地化も図られてきた。また製品間での分業については「市場ごとでの分業(Made in Market)」を前提にしながらも日本輸入に依存する部分も残している。これには日本製作でないと技術的、納期的に対応困難な「付加価値での分業」の他、「開発・設計との関係での分業」がある。これについては金型製作に係わるユーザー産業の開発・設計所在地、また開発・設計との擦り合わせ地、製品設計の完成度の高低との関係で製作地が決定する。これまで国際分業の先行研究については自動車や電気・電子といった最終消費財を対象に行われてきた。これらは主に技術やコストを軸にした分業論であったが、金型のような資本財産業ではそれだけにとどまらず、ユーザーとの関係など周辺環境にも規定されることが明らかになった。
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