研究課題
今年度は、第2年度に位置づけられ、バイオベンチャーの知財戦略とリアルオプション分析との関係を定量的に扱う試みを行なった。研究の背景として、65歳以上の人口比率が20%以上の高齢化、医薬品費の過去十年間での急激な上昇率、国内での治験の空洞化、臨床試験の規制要求に伴うコスト増、有望新薬の認可の減少・停滞、海外からの新薬の導入比率の高さ、国際競争・資本市場からの圧力に由来する製薬企業のM&Aを伴う研究開発費の拡大方針などの諸事実から、画期的新薬開発の生産性向上の仕組みが求められている状況がある。また、米国同様、日本における生命科学への基礎研究予算も大きなウェイトを占め、他方、製薬大企業は、競走上、研究開発資源を基礎研究よりも臨床等の医薬開発後段階に集中させる傾向があり、その開発ブロセスの空白を埋めるのが創薬を中心としたバイオベンチャーと期待できる。但し、開発期間・金額ともに要求規模の大きな創薬において、資源制約の大きなベンチャーが存続・成長するにはデスバレー(Death Valley)を克服しなければならない。そこで、大学発ベンチャーの代表としてAnGes MG の過去数年の財務データの一部を前提に、DCF(Discounted Cash Flow)モデルによってデスバレー状況を再現し、リアルオプション分析(Real Options Analysis)を試みた。まず、単純オプションの組み合わせとしてのチューザーオプション(Chooser Option)とコンパウンドオプション(Compound Option)の応用を試みた。その結果、1点推定法にて、当初オブションを含まないDCFモデルでの負のNPV(正味現在価値)を各オプションによって正のNPVに転換できることを示した。加えて、DCFモデルのボラティリティを基礎にして、モンテカルロシミュレーションを実施した結果、DCF、チューザーオブション、コンパウンドオプションの標準・拡張のNPVの分布を得た。こうして、特にチューザーオブションにて、NPVの期待値を負から正に大きく変え、同時に標準偏差としてのリスクを低減する結果を得た。また、DCFモデルにおける暫定的データからストカスティックオブティマイゼーションの手法で、NPVを最大化するロイヤルティの最適な支払方法を計算した。この方法は知財の評価に直接活用できる可能性がある。今後、ライバル企業との対応の中で、戦略の早期コミットメントとオプションによる柔軟性とのトレードオフを計算するオプショングームのモデルについて、生産量競争下での開発成果専有戦略と開発成果共有戦略に関するゲームツリーの構築・分析を試みる予定である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
研究・技術計画学会第21回年次学術大会講演要旨集(東北大学) 10月21-22日
ページ: 902-905
Proceedings of R&D Management Conference(Lake Windermere, UK) 5-7 July (in CD-ROM)
ページ: total 10 pages
Proceedings of GBATA, Moscow, Russia 27 June-1 July
ページ: 239-247
Proceedings of 17^<th>ISPIM Annual Conference, Athens, Greece 11-14 June (in CD-ROM)
Proceedings of LAMOT 2006, Beijing, China 23-26 May (in CD-ROM)
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