本年度は研究の第3年度として、中国現地の調査対象地である什刹海ならびに大柵欄地域の実情を調査するとともに、具体的には什刹海の商業的な中核である烟袋斜街において経営者調査を実施し、文化保存型商業街区における動向把握に努めた。経営者調査は、清華大学大学院院生の協力により実施され、現任翻訳作業を終えたところである。 また、同じく文化保存型の街づくりを実施しているハルビンの中央大街商店街の現地調査を行い、その実情を調査すると同時に資料収集に努めた。さらには、海外共同研究者李強清華大学教授との北京での打ち合わせを始め、最終年度の調査に向けて、平成20年2月に人民大学劉精明教授を招請し、打ち合わせを行うとともに、什刹海地区に関する最近の動向把握をおこなった。 今回、北京オリンピックを目前に控え、大柵欄地域は再開発のまっただ中にあり、立ち入り禁止地区も多かったため、その代わりに隣接する崇門区において調査の比較的な視点を確立するために地域開発状況を調査した。同じ都市開発といっても、宣武区大柵欄地区と崇門区の開発は、全く形態が異なり、宣武区の文化保存型開発に対して、崇門区は完全なスクラップアンドビルド方式をとっている。確かに、オリンピックを控え、短期的には街を完全に改造する崇門区方式のほうが見た目には大きく変貌しているが、長期的にみれば、文化財を保存しつつ開発している宣武区の方式が評価されるであろうと思われる。今後、本研究においても、地域間の比較的な視点を明確にすることも必要となろう。
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